「ゆとり教育」という言葉を聞いたことがありますか?今から40年ほど前に始まった日本の教育方針で、それまで主流だった「詰め込み教育」が危惧され見直された教育制度のことをいいます。詰め込み教育とは、暗記などによって膨大な知識を頭の中に詰め込み増大させていく教育方法のこと。とにかく勉強第一で、人気の習い事も学習塾やそろばんなど、知識量を増加させるものが多かった時代ですね。そんな詰め込み教育は、テストの点数が上がる一方、子どもの学習の動機付けや持続性に欠けるという短所が問題視されてきました。そこで政府が現状打破のために踏み切ったのが、ゆとり教育。今日は、そんなゆとり教育を受けてきた通称「ゆとり世代」の人たちの生き方について、見ていきたいと思います。
目次
「ゆとり世代」ってどの世代のこと?
ゆとり世代とは、1987年~2004年に生まれた世代のことを指します。
ゆとり世代は人当たりが良く大らか
ゆとり世代は、それまでの日本の「詰め込み教育」から解放されたゆとりある世代ということで、競争意識が低く、周りと衝突したり対立したりするよりも良好な人間関係を望む傾向があります。ゆとり教育が始まってから、昭和世代では当たり前だった体罰なども無くなっていき、日常を穏やかに過ごすことを求める人が多くなりました。そのため怒ったり怒られたりすることを避け、ストレス耐性が弱いということも問題視されてきました。
「ゆとり教育」って一体何?
「生きる力」を育むための教育制度
「生きる力」という言葉が使われ始めたのも、ゆとり教育が始まった頃だったといいます。今後どのように社会が変化しようとも、柔軟に強く生き抜いていける普遍的な力のことで、具体的には「自分で考え行動する」「課題を発見し、解決するために自分で行動する」「他者とのコミュニケーション力」など。主体性や問題解決能力だけでなく、協調性やチームワーク力なども求められるようになったのです。
自分で考え行動する力を備えるための教育制度
ゆとり教育が始まるまで行われてきた、通称「詰め込み教育」。先生や親を含む教育者の考えがとにかく勉強第一で、大人の言いなりになって勉学に励む子どもたちも続出しました。対してゆとり教育では、子どもたちが大人になった時「自分で考え、問題を解決しながら生き抜いていく力」を育むべく、その教育カリキュラムを一新することにしたのです。
学力よりも心の健康を維持するための教育制度
勉学が最優先されていた詰め込み教育では、勉強に楽しみを見いだせなかったり苦手だったりする子が、不登校になったりいじめに遭ったりする問題も多く発生しました。学力よりも、子どもの心の健康を健やかに育もうという思いのもと、始まったゆとり教育。ゆとり世代はデジタルネイティブと呼ばれる、幼少期からインターネットや電子機器に触れている世代。現代でもインターネットでの情報は溢れ返っていて、有益で安全な情報を取捨選択し人生に役立てていく力が養われていますよね。
「ゆとり教育」で新たに始まった取り組みとは?
学校が週5日に!
今でも当たり前なのが、週末に学校がないこと。実はゆとり教育開始前までは、土曜日にも授業があったんですよ。行政にもよりますが、土曜日が完全に休みになったり、体験学習や地域交流イベントに充てられたりしていましたね。
「総合的な学習の時間」がスタート
ゆとり世代にとっては親しみの深い「総合」の時間。一体どんな科目なのかというと、国語や算数のようにカリキュラムが決まっているものではなく、特定のテーマに沿って調べものをしたり、農業体験や地域の工場見学に行くなど、子どもが自分たちで考え行動するための授業を、先生たちが工夫を凝らしてプロデュースしました。
運動会での競争がなくなる
ゆとり教育が行われていた時代は、なんと運動会の徒競走で順位をつけることを無くした学校もあったほどなんです。まわりと競争するのではなく、協力しチームワークを大切にすることが最重要視されたゆとり教育では、まわりとの対立を生まないため、そして子ども一人ひとりを比較せず尊重するために、「競争」という取り組み自体が考え直されたのです。
相対評価から絶対評価へ
子どもの個性を尊重し、比較しない評価をするために導入された「絶対評価制」。それまでは成績ランクによって枠が決められており、そこに生徒を当てはめる形で成績を決定する「相対評価」という方法が採用されてきました。ところが、ゆとり教育が始まってから「絶対評価」が主流となり、ランクによって入れる枠を決めず、評価対象者一人ひとりに対して客観的な評価を下す方法に変わっていきました。
あれから「ゆとり教育」はどうなった?
2020年の教育改新で「脱ゆとり」
授業の内容を削り過ぎたことで、学習レベルが下がったことが問題視されたゆとり教育。2020年以降に新しい学習指導要項となり、文部科学大臣により「ゆとり教育との決別」が宣言されました。2004年以降に生まれた人たちは完全に「脱ゆとり世代」ということになります。
現代は「詰め込み教育」と「ゆとり教育」のいいとこどり
脱ゆとり宣言がなされてからの教育制度は、「詰め込み教育」か「ゆとり教育」かを二項対立的な議論は行わないとされています。学校での指導時間はゆとり世代と比べて増加されましたが、主体的な学び方や人間性を育む教育などは引き続き兼ね備えられています。脱ゆとり世代でも、詰め込み教育世代よりは個人やプライベートが尊重された環境で育っているので、新しい趣味を探したり仕事以外のことに打ち込む人も多いようですよ。
まとめ
現代を生きる皆さんも気になっているであろう「ゆとり世代」について、振り返ってみました。何かと話題になってきたゆとり世代ももう30代後半に差し掛かり、子育てをする人も増えてきたことと思います。ゆとり世代の子育ては、この先の子どもの主体性やコミュニケーション力、そして学力に大きな影響を与えていくのでしょうか。引き続き大きな注目を浴びそうx`ですね。